『決まりやなっ!』

『温泉かー…俺は若干ジジくさいと思うけど…』

『これとこれ、どっちがええかなー?』

『聞けよっ』



1999年11月

春は俺らの仕事が忙しいから

ちょっと早いけど卒業旅行に行く事になった

で、俺とが幹事する事になって…

ぜー沢にも年末に温泉に行く事になった

はクリスマスも俺らが仕事やから疲れがとれるようにと温泉に決めた



『ヨコはかに食べれるん?』

『かに?おぅ…あーすばるどうやろなー?』

『そやろー…いっそ食べ物無視して温泉オンリーで選ぶか…』

『でも温泉言うたって入ってしまえばお前一人やで?!』

『…ホンマや!!えーーつまらんなー…』

今気付いたんかいな…

俺は温泉って決まった時から気付いてたけどなー

『こんなんどや?』

『なになに?えっとー露天風呂付のお部屋も用意でき……嫌や…こんなん入るくらいなら一人でゆっくり入りたい』

『ヌフフ…お前が風呂入ってても誰も覗かんて…いや…すばるは分からんなー…あいつオスかメスの判断しかつかへんからなー』

『でもヨコらが3人で入ってるのもなー…』

『覗いてもえーで。覗いてみたいやろ?』

『そやな…興味あるかも』

『やらしーっ』

『違っそういう意味じゃなくって!!!』




4人でおる事が普通で誰かがかけても俺とだけになるなんてあんまりなかったし

ヒナに自分でも自分に隠してた気持ちがばれてからなんか知らんけどヒナの目が怖くて

一緒におる時とよー喋らんようになってしもてたからゆっくり喋るのん久々やー




『あーもう卒業やなー…ヨコらも仕事本格的に入るしあんまり会えんようになるなー…寂しいなー…』

手帳に何かを書き込みながらがつぶやいた…

そっか…そうやんなー…春から東京に行く事も増えるしこいつも短大に行くわけやし

あんまり会われへんねんや…




短大生かー…





新しい友達ができて…

着る服も変わって…

化粧とかして…

コンパとか…

彼氏とか…

めっちゃ嫌や。絶対嫌や。

でもそんなんこいつの自由や…

俺が嫌ー言うてもいつかはこいつにだって彼氏くらいできるやろう…

そんなんになる前に俺ちゃんと言った方がええんかな…





















今日はアホ程温泉街を歩きまくって…温泉入ったり足湯につかったり

足湯は4人でおれるけど俺らがバレてまう事を心配しては落ち着きがなかった

旅館についてカニをたらふく食って食べすぎやーってゴロゴロしてたら

村上がまた風呂に入るって言い出した…

もうえーやろ…

何が目的やねん…

もしかしてこいつ…ホモ説はホンマやったんか…

『なんやねん…ヨコ…なんでそんな目で見とんねん』

『いや…なんもない。俺もういいわー腹いっぱいやし眠い…』

そして君が怖い…

『あたしもいい…せっかくのカニを吐いてしまいそう…』

『そーかーほなーすばる行くでー』

『おぅっ』

そういうて二人が出て行ってシンとなって気がついた

二人っきりや…

さっきすばると旅館ゆうたら浴衣やろーって着替えさせた事をちょっと後悔した

どうにもこうにも…目のやり場がなくって泳ぐ泳ぐ…

『ヨコどうするー?もう寝る?』

『うん』

『どないしたん?顔赤いであんたはウーロン茶で酔ったんか?…あっもしかして熱ある?』

が俺のおでこに手を当てた

熱い?熱くない?大丈夫?と首をかしげてる

恥ずかし…

何か…ドキドキするねんけど…

はひいた布団を指差して

『もう寝る?誰がどこに寝よか?』と考えてる

離れてくれた事に助かったと思いながら残り香を吸いこんでた

『ヒナがすばるとは離して寝かさななーって言うとったぞ』

『なんでよ、大丈夫』

『なんでやねんすばるかって男やねんぞ』

『どう言う意味?』

『どう言う意味ってもうちょっと警戒しろ!例えば俺が今から襲うかもしれんとか、男やねんからそれくらいの事…』

しまった…いらん事言うた…

だってこいつホンマに何も疑ってへん…

そら3人おったら安心するかもしれんけど3人でって事も有り得るやんけ…

いや俺らに限ってはないかもしれんけど…

こんな奴コンパとか行ったら…

…ホンマ嫌やなー



『ちょっと旅館の中散歩してくるわ』

そんな顔せんといて

俺はただ…

『ちゃうねん、待てよ。ただ…』

『すぐ戻るから』

ふすまをやさしく閉めて出て行ってしまった

最悪や…

なんで最後までちゃんと言えんかったんやろ…

あーイライラしてきた…

もう寝たろ、一番窓側で布団を頭からかぶった













あれ?今何時やろ?

2時…かー

あ…あれ?

が広縁に続く障子を開けようとしてた

『お前何やってんねん?』

『あ…ごめん起こした?この人らうるさくて…寝られへん』

確かに…

村上は歯ぎしりするし

すばるは寝相悪いし意味の分からん寝言も…

ちょっと気まずかったけど

広縁にある古いイスに向かいあって座る

それくらいの事でキョドるなよ…

熱いお茶を入れてくれてテーブルの上に湯飲みを置くと同時に俺が湯飲みに手をのばしたら

がビクっとして湯飲みを倒した

『うわっ…おまっ…何してんねん…』

『ごっごめん』

完全にびひられてる…

『おい!さっきからお前なんかおかしいぞ』

『…だって』

『だって何やねん…俺がいらん事言うたからか?』

『…』

『ちゃうで…俺なんかしたろーとか考えてたわけやなくて…あの…その…』

『分かってる』

なにを分かってるねん…

『世の中ヨコらみたいな男の人ばっかりじゃないって事やろ…もうすぐ別々になるし…私の事心配してくれてるんやろ…』

冬の日本海はやっぱり寒くて…この寒さが別々って言葉を余計に切なくさせて

気がついたら俺は

『そうやお前の心配もやけど…俺は…多分自分の心配してる…めっちゃ妄想してまうねん…お前が誰かのモンになるとか…誰かに傷つけられるとか…考えられへんねん…俺な…好きやねん お前のこと…』

そんな事を言ってしまってて

なんちゃら言う歌はよう言うたモンでなんか好きやって言っただけやのに泣きそうになって…

これから始まるこいつの新しい生活に俺が不安抱いてどうすんねんって言う話で…

なんかちょっと情けなくなって俯いたら

『顔上げてや…私もな、ずっと思ってたで。もしこれからヨコらが忙しくなってもう私の知らんヨコらになってヨコらの活躍を雑誌とかテレビとかでしか見れへんようになって…きれいな女の人と写ってる週刊誌とか見てしまったり芸能人の友達もいっぱい増えて4人でいてる私のポジションに違う人が来て…そんなん嫌や…でもそんなんわがままやと思ってたし…口に出せんかってん…ヨコらはいっぱい可能性持ってるし最大限に広げてってほしいとも思ってる…活躍して欲しいでもなホンマは私だけのヨコやったらなって時々思うねん』

『ヨコら』『ヨコら』が『ヨコ』に変わったから…

の手を引っ張ってキスをした――――



『あたしも好きやで ヨコ』


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20091214再