―ガチャ―
『ヨコっ!』
『ヨコ!どないしたん?』
突然ドアが開いて入ってきたヨコは
真っ赤な顔をして肩を揺らしてた…
『なんやねん、お前…今までどこおってん?何しててん?』
『風邪…ひいて寝てたんです…』
小さく肩を丸めた亮ちゃんがヨコの後ろからボソっと呟く…
眉も目じりも下げて…泣きそうな顔してる…
ヨコが振り返って亮ちゃんの肩に手をおいて「ごめんな…」って言ったら
ちょっとだけ口の端上げて「ほんなら帰ります」って玄関に引き返した…
『風邪ひいたんやったらなんでそう言ってこーへんねん…待ってる方の身にもなれよ…いろいろ考えてまうやんけ!』
ヨコは「ごめん」とだけ言ってすばると反対側のソファに座った
私はそのヨコのか細い声とすばるの豹変ぶりに 言葉がでず 動く事もできず
ただただ 初めにいた位置から動けず 時々ヨコとすばるの様子を伺っていた
『で、何しに来てん?花火…もう終わったで…』
『ヒナが…お前ら二人やって言うから…』
『言うから何やねん…』
すばるが右の手の甲をさすってる…
ヨコも気付いてるやろな…
強気な言葉の裏にすばるの精一杯がつまってる事…
『俺…にキスしたで?』
ヨコは一瞬表情を変えただけでいつもの様に口を尖らした…
『俺…お前がそんなんやったらホンマにもらうで?』
すばるの言葉に我慢できなくなって胸の上に垂れたネックレスを服の上から握りしめた…
どうぞ なんて言われたらきっと私立ち直れん…
『私…っ! 』
暗闇が怖くて朝が来る事をひたすら願った夜もあった…
でも一緒にいてくれる仲間がいてる事 心強かった
でも今日は3人で居ても不安で仕方ないよ…
朝が来てしまう前にちゃんと話…しやな…
きっと私いちいち傷ついた顔をするのが嫌で
ヨコの負担になるのが嫌で
いつの間にか どんな事にも笑顔で交わせるようになってしまってたんやな…
気付いたら泣く事までも忘れてた私に
すばるが差し出してくれた手のひらは
あの日小さく震えてた捨て猫みたいなすばるの手ではなく…
私の手をすっぽりと包み込んでしまうような大きな手で
刻まれた証が誇ってた…
でも…もう甘えれん…
どんな風に伝えよう…
子供みたいに拗ねたかと思ったら
メンバーを大人の顔して見渡してる
プリンほお張ってるかと思ったら
すばると信五とビールを飲んでメンバーに絡んでる
意地張り過ぎて損する性格も
メンバーが分かってくれてるならそれでいいと思ってる
そのメンバーを一人として失う事が怖いから…
その思いが強すぎて…例えば他の誰かを傷つけたとしても…
守ってしまうんやね…
そんなヨコの優しさを好きになったから否定するつもりなんてない…
ちぎれてしまうような愛情や友情なら古傷になるのやろうけど
ヨコとすばるの場合癒えんまま…生傷のまま一生残りそうやから
それならいっそ…
そっと離れよう…
『そんな事で壊れる関係やと思ってんのか…俺らのこと…』
『すばる…』
文章にならん言葉を繋げて繋げて喋ったら涙が溢れて…
驚くヨコの代わりにすばるがポンポンと喋り出す…
『俺とヨコはなー…そんな事で壊れてまうような関係ちゃうわ…そんなんお前が一番よく知ってる事やろ…なんやねん…ちょっとがっかりやわ…どうせヨコだってあれやろ?俺に気つかってるうちにホンマの自分見失ってんやろ…言ったやろヨコ…俺お前とヒナとおりたいねん…俺一人になんてなりたない…だから俺に遠慮してとヨコが別れるとか勘弁してくれ』
すばるの左手がまた右手を覆った…
『もし俺とが溺れてたら「お前らアホかー」言うて二人とも助けてくれるヨコでおってくれよ…幸せにしたるって言うたんやろ…ちゃんと約束守れよ…なんも笑わしておく事だけが幸せにする事とちゃうぞ時々けんかして泣かす事だって幸せな事やねん…』
『すばる…』
『なんやねん…その顔…あっ!もしかして俺の言葉に感動したか?』
ヨコを指差してちゃかしてるすばるの笑顔にはきっと多くの意味が含まれてて…
曇ってたヨコの顔が
『は?感動?してへんわ!ちょっとは俺にも喋らせろって言おうとしてん!』
やっといつもの表情に戻った…
『何をやねん!喋ったらええやんけ!』
『ほら… あれや… …あの… 』
『何やねん早く言えや』
『すばる うっさいねん!』
『そやこいつ…引越すとか言うとったで』
『はあ?』
そ…そや…その事あったんや…
『引越してどこ行くねん!』
『え…実家に戻ろうかなと…』
『お前勝手すぎるねん!俺どないすんねん…』
『ごめんやけどヨコも実家に帰ってよ』
『帰るってお前…俺の部屋弟が使ってていつも家帰ったら俺おかんの部屋でおかんと寝てるねんぞ』
そうやったんや…想像したらめちゃ笑えて…久し振りにすばると大笑いした…
笑い過ぎて涙が出てきて…
涙が出てきて…
笑ってたはずが…
ホンマに嬉しくて…
笑えんくらい嬉しくて…
良かったぁー…
『ごめんな…俺…』
言葉にできひん想いがヨコの中で絡まってる…
ふふっと笑ってすばるはベランダに出た…
『俺…全然気持ち変わらんから…だから… 』
その時
― バンッ バンッ ―

突然ベランダが明るくなった
『え?』
『花火や…』
― バンッ ―

ベランダに出たら河川敷から3発目の花火があがった…
呆気にとられてたら
携帯が鳴って…
『見たかー?花火?3人で見たか?』
『信五… 見たよ!』
『そうかー俺も見てるでー今年も4人揃って約束果たせたなー!』
『信五? 今どこなん?』
『俺?俺花火の下やで?』
『えーーーーー?』
アホやと言いながら次々と上がる花火に二人ともめちゃ嬉しそうに手をたたいてた…
そんな二人を見てたらまた涙が出てきて…
私の頭を撫でてくれるすばるの右手と
遠慮がちやった去年までとは違う…ヨコの左手が温かくて…
『『泣くなよ…』』
ハモった二人の声に
また泣けた…
いつまでも一緒にいれます様に…
花火に願いを込めて…
END
20091214訂正